石川 大雅 氏 / 株式会社ミーミル【インサイドセールス図鑑】

インタビュー・対談

「経験知に価値を与える」をミッションに企業の意思決定を円滑化、最適化するためのリサーチ支援サービスを提供する株式会社ミーミルにて、インサイドセールスとして活躍する石川様にお話を伺いました。石川様は学生時代にインサイドセールスを経験した後にフィールドセールスとカスタマーサクセスを経験し、現在は大手企業向けの顧客深耕型インサイドセールス組織の体系化に携わっていらっしゃいます。

ご自身の今までのキャリアについて教えてください。

学生時代にfreee株式会社で長期インターンとしてインサイドセールス(以下IS)を経験しました。当時は、簿記の資格を取るなど会計領域に興味があったため、会計×ITに取り組んでいた同社でのインターンを選びました。その後、新卒で入社した株式会社オロでフィールドセールス(以下FS)とカスタマーサクセス(以下CS)を経験しました。転職して、株式会社サイトビジット(現在のfreeeサイン)のISリーダーとして立ち上げに関わり、現在は、株式会社ミーミルで大手企業向けの顧客深耕型ISの立ち上げを担当しています。

ISの最初の印象はどうでしたか?

正直なところ最初は、電話自体が辛いと感じていました。私自身SNSに慣れ親しんでいたのでテキストコミュニケーションが多く、電話をすることは日常的にあまりなかったんです。慣れるまでは、電話をかけるのが億劫でしたね。

CSやFSを経験して、改めてISに戻ったのはどうしてですか?

CSとFSを経験したからこそ、ISを面白いと感じられるようになりました。理由は主に2点あります。

1つ目は、事業部全体で成果を追えることです。ISは何件商談をとっても受注しなければ意味がなく、関連する部署での工程もしっかり考える必要があります。顧客の声を電話を通じて実際に聞けるため、当然のことながらマーケティングやFSとの関わりに加え、案件を受注した後はCSとの関わりも発生します。事業部全体として一緒に成果を追えることがISの魅力だと感じています。

2つ目は、データマネジメントの面白さです。ISはFSやCSに比べて顧客接点が多いのでデータが集まりやすく、データをもとに細かい軌道修正ができて、仮説検証や改善のサイクルが早いので楽しいですね。

FSやCSを経験して、ISへの取り組み方は変化しましたか?

FSやCSでは、お客様のことを狭く深く考えることで解像度を上げ、仮説を立ててアプローチする経験をしました。同じプロセスをISの業務に落とし込み電話やメールで実践してみると楽しくなりました。以前に比べ、アプローチする前の準備として社内に蓄積されたCRMなどのデータベースを確認したり、ネット検索を通して顧客を想像したりすることが身につき、ヒアリングの質や訴求、提案の幅が広がったと思います。また、他部署と連携するときにも、FSとCSを経験していたからこそ、それぞれの部署の人の視点や気持ちが理解できるようになり、連携しやすくなったように感じます。

社内MTGの様子

ISのインターンをしていて大変だったことを教えてください。

インターン生の頃は、経験も知見も足りなかったこともあり、電話をかけてもかけても繋がらなかったり、商談獲得できなかったり、うまく成果に繋がらなかったときは辛かったです。こういった時には、自分が取り組んでいることを認めて、成果は明日出す!という気持ちに切り替えていました。

ただ、今振り返ると「なぜ電話が繋がらなかったのか」「なぜ商談が取れなかったのか」をもっとしっかり考えるべきでした。例えば、8時間の業務時間をすべて架電に充てるのではなく、架電時間を6時間にして、2時間分を今日の振り返りや次の日の準備に充当することで、翌日の架電の質を上げることができます。こうやって内省やチームとの対話の時間を積極的に作ることが重要だと思います。 

現在の業務について教えてください。

大きく分けて、3つの業務を担当しています。まずは、大手顧客向けの深耕ISです。立ち上げから関わり、体系化に向けて取り組んでいます。2つ目が、営業企画です。アカウントプランの作成、キャンペーンやセミナーの施策企画と効果測定、他部署連携の窓口などです。3つ目はCS−IS(シーエス・アイエス)といって、既存顧客向けのメールマガジンの作成、配信や担当者に相談しやすいようなポータルサイトの構築などのテックタッチ(※)施策を担当しています。

※テックタッチとはメールや管理画面上のチュートリアルなどを利用して、個別ではなく、幅広い顧客に対し活用促進を目指すことを指します。

ISに取り組む上で意識していることを教えてください。

まずは、データマネジメントです。具体的には、セールス部門が商談を取りたいリードやマーケティング部が確度が高いと判定したリード、セミナーのアンケート情報など、すべての情報を1枚のスプレッドシートで管理することで、効率的かつ顧客思いのアプローチができる体制を作っています。

次に、「考えるIS」として既存のデータから言えることや傾向などの仮説を出し、新規の施策を提案したり既存の施策に対して改善を行うようにしています。リードソースの優先順位もスプレッドシートを使って管理しています。また、受注確度が高いかどうかによって優先順位を明確にしていますが、その判断基準は、マーケティング部と一緒にカスタマージャーニーを作成の上、導入に近いフェーズにいる顧客の優先順位を上げるようにしています。顧客とサービスの接点から導入まで、つまり顧客がサービスをどこで知って、どのように検討、比較して、決断するのか、といった流れを把握するのが大事です。

ISに携わる中で嬉しかったことはなんですか?

ISで嬉しかったのは、メンバーの成果があがったことです。IS架電の4ステップである「感謝→ヒアリング→訴求→提案」を重要視しているのですが、それをメンバーが身につけて成長してくれたり、成果として獲得商談数を増やしてくれたりしました。

特に今までで一番嬉しかったのは、FSに異動したメンバーがトップセールスを取ったことです。最終的なメンバーの成長の幅や速度は、私(マネジメント側)だけではコントロールできないポイントなので、嬉しかったです。

業務に関してどのように情報収集していますか?

とにかく本を読むようにしています。特に情報源に偏りがでないよう、各分野で複数冊読むことを意識しています。その人の手法を完全コピーするより、広く情報を取り入れ、噛み砕いて理解した方が自分のものにできると思っています。

▼石川さんおすすめの本

IS

  • 『インサイドセールス訪問に頼らず、売上を伸ばす営業組織の強化ガイド』(茂野 明彦 著)
  • 『インサイドセールス 究極の営業術 最小の労力で、ズバ抜けて成果を出す営業組織に変わる』(水嶋 玲以仁 著)

FS

  • 『THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』(福田 康隆 著)
  • 『チャレンジャー・セールス・モデル 成約に直結させる「指導」「適応」「支配」』(マシュー・ディクソン 他)
  • 『大型商談を成約に導く「SPIN」営業術』(ニール・ラッカム 著)

CS

  • 『カスタマーサクセスとは何か――日本企業にこそ必要な「これからの顧客との付き合い方』(弘子 ラザヴィ 著)
  • 『カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』(ニック・メータ 他)

ISにおすすめのツールを教えてください。

大前提として、新しいツールを導入する前に、データ集計や分析のスキルを身に着けることが重要だと思っています。ツールを導入してもそこにどんなデータが存在していて、そのデータから何が言えるのかを読み解けなければ意味がないのです。そのため、まずは手元にあるツールに目を向けてみることが大事です。ここではGoogle Workspaceを導入している企業であればすぐに使える2つのツールをおすすめします。

まずはスプレッドシートです。無数のいろんな関数がありますが、それらを覚えれば、どのようなデータも集計できて便利です。関数を覚えてさえしまえば、どんなデータでも扱えるということです。

関数を覚えるのが大変という声が聞こえてきそうですが、最初は「このデータを自動で集計してくれたら便利だな」と思った時に、適切な関数を調べるといったことから始めればいいのです。私も関数を忘れたら、都度調べています(笑)。さらにスプレッドシートは拡張性も高く、SFDC(セールスフォース・ドットコム)等の外部システムとの連携もできるため、手間を掛けずに自動集計してくれるところもおすすめポイントです。

次にGAS(Google Apps Script)です。スプレッドシートはデータ集計の自動化ができるツールですが、GASはツールとツールを繋ぐ機能があり、作業効率化や自動化、通知など非常に多くの場面で役立ちます。Slackワークフローからスプレッドシートへの書き出しやGoogleフォームからSlack通知など、他ツールと連携させて使っています。ツールを導入しても活用できないと、結局もったいないことになってしまうので、まずは手元にある身近なツールの活用から取り組んでみるのがいいと思います。

リフレッシュ方法について教えてください。

自分と向き合う時間を作ることが重要だと考えています。心、身体、頭の3つの観点を意識しています。心のリフレッシュとしては、コーチングや瞑想などを取り入れています。

また、趣味として昨年から始めた茶道は、日常から離れることで心が落ち着く貴重な時間です。身体のリフレッシュとしては、ジムで筋トレやストレッチをしています。さらに、仕事には直結しない、自身の興味がある分野の本を読んだり、英語の勉強など新しい知識のインプットを頭のリフレッシュ兼アップデートとして行っています。

趣味の茶道

これからの展望について教えてください。

これから目指していきたいことは3つあります。まず、顧客深耕型ISとしての型を作っていきたいです。まだ、型が定まっていないので、体系化して一つでもハウツー(How to)を生み出したいですね。

次に、外部スクールで学んだコーチングを活用して、人材育成に関わっていきたいです。キャリアステップとしては、現在のISの後に、営業企画やセールスイネーブルメントにシフトし、営業の人材育成を担当していけたらと考えています。

最後に、今後のキャリア全体を通した話になりますが、やりたいことをやり続けていきたいと思っています。自分がどうなりたいか、どうありたいかを素直に追求していきたいです。キャリアでよく言われる市場価値という概念はありますが、私は私、市場は市場と分けて考えるようにしています。本当に自分がやりたいことを続けていった先に、自身の価値が評価されればラッキーというように考えていますね。

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