スマートキャンプ株式会社 井塚 大輔氏【インサイドセールス図鑑】

インタビュー・対談

これまでのキャリアについて教えてください。

新卒でスマートキャンプ株式会社に入社しました。インターンは行っていなかったので社会で働いた経験は特になく、THE MODELやインサイドセールスについては正直よく分からない中でインサイドセールスとしてのキャリアを始めました。入社後最初の一週間は研修も兼ねてほぼ接続しないホワイトリストへのアウトバウンドコールをやっていたのですが、アウトバウンドコールの歩留まり平均値などは知らなかったので、電話は全く繋がらないし話せても資料送付すらできず商談に至らないしで、自分はダメなんじゃないか、怒られるんじゃないかとびくびくしながら電話をしていたのを覚えています(笑)インサイドセールスとして結果を出せるのか不安だったし、何をやっていいのかよく分からないという思いもありました。

その後、グループウェアを扱う部署にインサイドセールスとして本配属されてからは、一転してインサイドセールスって意外と楽なのではないかと感じていました。研修中のアウトバウンドコールは最終的に商談獲得できましたし、毎日インバウンドリードが流入してきたので商談が獲得しやすかったのです。たくさん商談が取れて周囲に褒めてもらえたので、最初の数カ月間はかなり楽しいと感じていました。すぐに成果を出せたことでインサイドセールスとしての喜びを早い内に味わえたのは、経験として良かったと思っています。ただ、その後の部署異動によってインサイドセールスに対する考えが全く変わることになりました。

インサイドセールスに対する考えはどんな風に変わったのですか?

楽だという印象はなくなりましたね(笑)扱うサービスの特性が大きく変わり、新しいやり方を模索する必要が出てきたことは自分にとって最初の壁になりました。前部署で扱っていたグループウェアは各社で既に取り入れていて、企業にとってのインフラと言っても過言ではないものです。既に予算が確保されていることが多いため比較検討の土台に乗りやすく、サービス自体の説明に苦労するという経験はありませんでした。しかし、異動先で扱うサービスのインサイドセールス向けセールスエンゲージメントツール「BALES CLOUD(ベイルズ クラウド)」はサービスの新規性が高く、確保されている予算もなければ、そもそもセールスエンゲージメントの概念すら知らないというお客様が多く苦労しました。

まずはサービス説明の前段として、セールスエンゲージメントの必要性を説明し、価値を感じてもらうという啓蒙活動からスタートする必要がありました。それまでのような待ちの姿勢では当然商談に繋がらないし、単純に行動量を重ねれば解決するものではないと感じたのを覚えています。お客様にサービスの価値や魅力を感じてもらえたと思えるようになるまで、時間がかかりました。1回の電話で必要性や魅力が伝わるものではないので、3ヶ月~12ヶ月ほどのスパンで継続的に電話やメールでアプローチを行うことで、少しずつサービスの価値を感じてもらい、お互いに納得した上で商談にて導入検討をしてもらう。サービスを検討していないからアプローチをやめる、ではなく、時には自社のサービスに今すぐフィットする課題ではなくても、どうしたら解決できるかを共に思考しながら、継続的にお役に立ち続けることで信頼を勝ち取っていく必要がありました。

そのために、お客様のことにお客様以上に詳しくなろうという意識を強く持つようになりました。そのおかげで壁を乗り越えられましたし、今でも継続的に意識しています。加えて扱うサービスの周辺領域に関するインプットにも注力しました。例えば、インサイドセールス組織が成果を出すために必要な要素を洗い出し、構造的に理解するようにしました。自社サービスのみならず、MA、SFA/CRM、CTI、リストツールといった他のセールステックについても積極的に情報収集をしたり、インサイドセールス組織の解像度を上げるために「売上規模が◯◯円程度で、今年増員して5名になったチームはどのような事象が起こり得るのか」というシュミレーションをしてみたこともあります。お客様よりお客様に詳しくなることと業界やサービス、その周辺領域に関する知識を深めることで、お客様のためにやれることは何でもやろう、という心がけで動いていました。

顧客理解、業界やサービス知識を深められると、どんなメリットがあるのでしょうか?

お客様から相談を受けるなど、能動的に反応をいただける回数が圧倒的に増えました。相談までいかなくても送信したメールへの返信率が高くなったり、商談には至らずとも電話でのやり取りが弾むようになったのです。お客様から感謝されることが多くなり、対話ができている確固たる手応えが生まれたのは自信になりましたし、商談数などの定量的な成果にもつながっていきました。

こういったお客様とのやり取りは、自分が行っている発信活動にも生きています。メルマガを月2~3回配信したり自身のSNSでも積極的に発信したりしているので、頻繁にコンテンツを配信できていることをお客様から褒めていただくことがあります。量産できているのはお客様との対話から得られたインプットと日々の取り組みから吸収できたナレッジが多いおかげです。Aのお客様との話題をBのお客様とも話してみたら違う反応があったりしますよね。色々な方と話せば話すほど、自分の引き出しが増えていく感覚があります。それに加えて個人的にも、インサイドセールスの活動を発信しているので、まだまだアウトプットできることがたくさんあり、発信する場所ももっと増やしていきたいと思っています!

自社イベントに登壇

他にもインサイドセールスとして意識していることがあれば教えてください。

物事を実行に移す際に、仮でいいので「目標と期限を決める」「行動しきる」「常に変化する」の3つを意識しています。これらが自分の中で行動する上でのサイクルになっています。

・目標と期限を決める

例えばABMアプローチを開始した場合、入り口はとりあえずやってみようでもいいと思うのですが、仮の目標すらないと想定より成果が出たのか出ていないのかが分からず、結局施策の良し悪しが測れません。これはインサイドセールスの施策が何となくで進んでしまう大きな原因になります。インサイドセールスはリードが一定数手元にあれば、ふわっと進めることもできてしまうんですよね。しかし、それは危険信号です。振り返りができないので手元に何も残りません。100件のリストから来週までに5件の商談を取るとか、仮でいいので決めましょう。そうすれば、達成か未達か、その要因は何かと振り返りができます。目標値がそもそも高すぎた、というのも目安を定めたからこそ分かることです。

・行動しきる

目標と期限を決めたら次は実行です。ここでいう「行動しきる」は、インサイドセールスとして予め立てた行動計画を100%確実にやり切るということと、お客様のためにどれだけ創意工夫しきれるかという2つの意味を持ちます。一定量のアプローチと工夫をやりきるからこそ、意味のある振り返りができます。そこまで行動も工夫もやりきれてないのに成果が出てしまうと、効果検証ができないんですよね。これは施策実行における典型的な失敗パターンだと思うのですが、実際には結構起こりがちです。とにかくやりきることで効果を最大化させ、成果を検証できるようにすることで次に繋がります。

・常に変化する

インサイドセールスの市場は常に動いていますよね。お客様に接触できるまでに必要な電話の回数が数年前は3~4回だったが今は8回必要だというデータ※をZoominfo社が発表していました。お客様とのコミュニケーション手段は年々増加しており、営業において活用されるツールも多岐に渡りますし、市況感も激しく変化しています。そうなるとお客様の資金の使い方は変わり、合わせて営業戦略も工夫をしているはずです。なのでインサイドセールスが変わらなくていいことは絶対になく、都度考えうる最適な方法を模索して変化していく、ということを意識しています。

78 Key Sales Statistics That’ll Help You Sell Smarter in 2024:公開日December 20, 2023

インサイドセールスをやっていて楽しいと感じるのはどんな時ですか?

メルマガに返信が来た時はすごく嬉しいです。サービス紹介などではなく純粋にお客様へのインサイドセールスに関する情報提供を続けているのですが、それに対していつも情報ありがとうとか、この部分について興味があるので質問したいのですが…などとお客様からのプラスな感情が伝わってくる返信内容だと、やっていてよかったと感じます。自分に置き換えてみても、配信停止以外でメルマガに返信することはそうそうないと思うんですよね。なのでプラスな反応をいただけた時は、お客様のためになる情報を届ける動きができているなと実感できます。

情報発信は、ともすると情報提供をするだけになってしまうのでは?というご意見をいただくこともあるのですが、メルマガ配信を続けることで自身の認知やお客様からの信頼を獲得でき、商談機会の創出にもつながっています。情報発信などの活動は定量的な成果が出ていることを証明できずになあなあで終わりになってしまうケースが多いかもしれませんが、実際にメルマガで生まれた関係値から商談が獲得できたり、商談中のお客様にご覧いただいたりすることで、商談を進める上での後押しになったします。

もちろんインサイドセールスとして成果を出すことが一番重要なので、成果を商談数と定義するのであれば情報発信だけをしていればいい訳ではありません。ですが、毎月流入してくるリードに対してとにかく商談を打診をする、それでも足りなければとりあえず3ヶ月前のセミナーリードに焼き畑的に電話するという行動を繰り返すよりは、将来のお客様と中長期的に関係を築くアプローチとして有効だと考えています。100件のリードに対してやみくもに電話をして商談になるのは1件程度だとするとその他99件の商談にならなかったお客様は、必要としていないタイミングで商談を打診され顧客体験を損ねられています。そうなると以降は電話に出てくれないかもしれません。自分にとって、そういった行動は将来お客様になり得た方を自ら失っているに等しい感覚があるのです。目先の商談数を積み上げるために動いているのに、その行動が将来の自分たちの首を絞めている。なのでアプローチはとにかくお客様目線に立ち、役に立つ情報を提供することで未来のお客様になってもらうための行動をすることを心がけています。

自社イベントでの記念撮影

インサイドセールスをやっていて苦労したことは何ですか?

色々あるのですが、ハウスリストにリード件数自体はたくさんあるのにインサイドセールスのアプローチ余地が全くない、あるいはあるのかわからないという状況を改善するのに苦労しました。付与されている情報が足りなかったりバラバラだったりして、リストを意味のあるセグメントで区切ることができてなかったのです。その場合アプローチにおける優先順位がつけられず、とにかく電話だったりメルマガを何となく送ってみるなどのあまり効果的ではない策を講じるしかなくなってしまいます。当時はそれを避けようと、毎月のインバウンドリードに頼るしかなかったのですが、新規リードが少ないため商談目標が未達になってしまう、仕方ないのでハウスリストに対してセグメントも分けずにとりあえずアプローチをしてみる…という負のループに陥っていました。いわゆる自転車操業ですね。やみくもに頑張る以外に改善策がない、という状況が辛かったです。

これを解消するために、仕組みから変えていきました。見込み顧客をしっかり管理するために、リードのフェーズ定義を設計し直したのです。リストの健康状態を把握できるように、どんな属性のリードが何件あるのかを明確にして、それぞれのフェーズにおいてどれくらいの頻度で連絡するのかなどもルールとして設定しました。2023年5月くらいから取り掛かってようやく運用に乗ってきたところです。こうした経験を経てインサイドセールスを科学したいと思うようになりました。

フェーズ定義などの設計にあたり、どうやって情報収集をしていますか?

一次情報を取りに行くことに最も重きをおいてます。例えば、読者の皆さんは社内の他事業部のインサイドセールスが何をしているのかを知っていますか?私はかなり情報収集していて、他事業部で行っているフィールドセールスへの申し送り事項や失注アプローチのルールなど細かいところまで把握しています。こうした点は意外と把握していないものですが、自分たちの組織とは違う方法で良い結果を生み出していることも多いので、知っていて損はないです。お客様に対しても同じで、臆することなくどんどん質問するようにしていますし、時には情報交換を目的としてWeb会議を実施したり、交流会に足を運んでインサイドセールスとしてどのような取り組みを実施していて何に困っているのか、お伺いするようにしています。やはり一次情報に勝るものはないなと感じます。あとはSNSで幅広く情報を拾ったり、たまにですが海外の文献を参考にしたり、でしょうか。

あとは、収集したノウハウを実際に手と頭を動かしてやってみることを大事にしています。インサイドセールスは特にそれがやりやすい仕事ですよね。メールのTips記事を読んだのなら、次送るメールで実践するとか。このインタビュー記事もそうですが、読むだけで終わらせないで、「じゃあ自分はここを変えてみよう」と考えて本当に行動するところまでやりきれると、情報収集をする意味があると思います。

なにかオススメのツールはありますか?

BALES CLOUD」はもちろんオススメです!ただ、インサイドセールスとしてツール活用が必須になり便利なものがどんどん増えている中で、そもそもショートカットの活用やよく使う単語のユーザー辞書登録などを当たり前に行えないと、その先のツール活用は難しいです。基本的なツールはマストで使い切るという姿勢がより高度なツール活用に生きてくると思います。自分はメンバーが議事録で同じ単語を3回以上打ち込んでいるのを見て、頻出するなら辞書登録しよう!と口うるさく言ったこともあります(笑)

リフレッシュ方法は何ですか?

休暇中にネットの世界に浸かりすぎないというのは意識してます。Amazonランキングで上位の本を確認するのと、本屋さんに寄ってみて並べられている本を見るのは似ているようですが、感じ方が全然違いますよね。そうした感性を大事にしたいと思ってます。自分は服が好きなのですが、基本的には実際に見に行ってから買います!

これからの展望について教えてください。

インサイドセールスといえばスマートキャンプと言われ、インサイドセールスであれば「BALES CLOUD」を当たり前に使っているよねという新しい世の中のスタンダードを作っていきたいです。もちろんプレッシャーや不安も感じますが、それ以上に実現できた時のワクワクも感じられているので、仕事としていいチャレンジだと思ってます。

個人としては、自分がインサイドセールスとしてやってきたこと、考えてきたことが正しかったとキャリアの中で証明したいです。直近であればお客様からプラスな反応をいただけた時に自分の仕事は間違ってなかったと思えますが、それをより長期的なスパンで、かつ大きな影響力をもって感じられるようにしたいです。今後のことなのでまだわかりませんが、事業全体を統括する立場だったり、起業したり、環境を変えて別の会社で働いたりした時にインサイドセールスの経験が活きていたら、全力で取り組んできた意味があったと実感できると思います。そう感じられるようになるためにも、もっともっとインサイドセールスをハックしていきます。

井塚さん、ありがとうございました!

最後に、インサイドセールス図鑑編集部よりインサイドセールス同士で交流できる「BALES インサイドセールス キャンパス」をご紹介します。無料でご利用いただけますので、インサイドセールスの情報収集にご活用ください。

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最後までご覧いただきありがとうございました。

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