ABMとは
ABMとは、Account Based Marketing(アカウントベースドマーケティング)の略で、自社の商品やサービスを購入する可能性が高い特定の顧客企業(アカウント)に対して、個別に最適化されたマーケティング活動を行う方法です。
一般的なマーケティング手法では、広く多くの見込み客を集めてから、段階的に絞り込んでいくという流れになります。しかし、ABMでは、最初からターゲットとなる顧客企業を絞り込んで、そのニーズや課題に合わせたコンテンツやキャンペーンを展開します。そのため、より効率的に顧客企業との関係性を深めることができます。
ABMのメリットとデメリット
ABMには、以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
ROI(投資対効果)が高まる
ターゲットとなる顧客企業に対して最適化されたマーケティング活動を行うので、無駄な広告費や時間を削減できます。また、顧客企業のニーズや課題に応えることで、信頼関係を築きやすくなり、成約率や収益が向上する可能性が高まります。
競合他社との差別化ができる
顧客企業ごとにオーダーメイドのコンテンツやキャンペーンを作成するので、競合他社との差別化ができます。顧客企業のロゴや社名を入れたパーソナライズされた動画やレポートを送ったり、顧客企業の課題に沿ったセミナーやワークショップを開催することで、印象に残るマーケティング活動が可能になります。
営業とマーケティングの連携が強化される
営業とマーケティングが共通のターゲットとなる顧客企業を定めて協力して行動することで、営業とマーケティングの連携が強化されます。マーケティングが顧客企業の情報収集やコンテンツ作成を行い、営業がそのコンテンツを使ってアプローチやフォローアップを行うなど、役割分担が明確になります。
デメリット
ターゲットとなる顧客企業の選定が難しい
顧客企業の規模や業種、ニーズや課題、購買意欲や決裁権限など、様々な要素を考慮しなければならないので、この顧客企業の選定がとても重要で、かつ容易ではありません。また、選定した顧客企業が本当に自社の商品やサービスに興味があるかどうかも確認する必要があります。
コンテンツやキャンペーンの作成に時間とコストがかかる
顧客企業ごとにオーダーメイドのコンテンツやキャンペーンを作成する必要がありますが、作成には時間とコストがかかります。例えば、顧客企業のニーズや課題を分析し、パーソナライズされた動画やレポートを制作するとなれば、一般的なマーケティング手法よりも手間がかかります。
効果測定が難しい
顧客企業ごとに異なるマーケティング活動を行うため、効果測定が難しい場合があります。一般的なマーケティング手法では、ウェブサイトのアクセス数やリード数などの指標で効果測定を行いますが、ABMではそれらの指標だけでは不十分です。顧客企業との関係性の深さや満足度などの質的な指標も考慮しなければならないでしょう。
ABMを導入するための4つのステップ
ABMを導入するためには、以下の4つのステップを踏む必要があります。
ステップ1:顧客アカウントの選定と優先順位付け
まずは、自社の商品やサービスに最適な顧客企業のターゲット・アカウント(価値のある見込み顧客)を選定します。選定する際には、顧客企業の規模や業種、ニーズや課題、関係性、競合状況、さらに顧客企業から得られる利益やLTV(顧客生涯価値)を考慮しましょう。
選定したターゲット・アカウントには優先順位を付けて、どの企業にどれだけリソースを割くかを決めます。優先順位付けには、ABC分析※などの手法が使えます。
※ABC分析とは:売上高・コスト・在庫といった評価軸を一つ定め、多い順にA、B、Cと3つのグループ分けをし、優先度を決める方法
ステップ2:顧客アカウントの分析と理解
次に、ターゲット・アカウントの詳細な情報を収集し、分析します。分析する内容は、顧客企業のビジネスモデルや戦略、意思決定に関与する人物や役割、顧客企業が抱える問題や目標、また購買検討する際のプロセスや基準です。
分析した情報をもとにペルソナやカスタマージャーニーマップなどを作成し、顧客アカウントを深くインプットします。これにより、顧客アカウントに対して最適なアプローチ方法が見えてくるでしょう。
ステップ3:顧客アカウントに対するコンテンツやキャンペーンの作成と実行
次に、ターゲット・アカウントに対して効果的なコンテンツやキャンペーンを作成し、実行します。コンテンツやキャンペーンは、顧客のニーズや課題に対応した内容や利用するチャネルやメディアで配信される形式、購買検討する際のタイミングに合わせた配信時期などの特徴を持つ必要があります。
また、マーケティング部門だけでなく営業部門とも連携して作成し、実行します。営業部門はコンテンツやキャンペーンで興味を持った顧客アカウントに対して、個別にアプローチをかけていきましょう。
ステップ4:顧客アカウントに対する効果測定と改善
最後にコンテンツやキャンペーンの効果を測定し、改善しましょう。効果測定には、顧客アカウントからの反応やアクション、関係性やエンゲージメント、売上やLTVなどの指標が使えます。
その結果をもとに、コンテンツやキャンペーンの内容や配信方法を改善し、ターゲット・アカウントの選定や分析も見直し、最適化していきます。このようにして、ABMは常にPDCAサイクルを回していきます。
ABMとデマンドジェネレーションやMAとの関係性
ABMは、デマンドジェネレーションやMAというBtoBマーケティングの手法とも関係があります。ここでは、それぞれの手法とABMの違いと関係性について説明します。
デマンドジェネレーションとは
デマンドジェネレーションとは「需要の創出」という意味で、見込み顧客(リード)を獲得・育成し、絞り込んでいく一連の活動です。デマンドジェネレーションでは、あらかじめ定義したターゲットセグメント(市場や業種、企業規模など)に対して広くアプローチし、育成・絞り込みフェーズを経て徐々に受注確度を高めていきます。
メリットは、リードの質や量の向上やマーケティング活動のROIを測定しやすくなる、また営業部門へのリード引き渡しをスムーズにすることができます。
デマンドジェネレーションの例として、WebサイトやブログなどでのコンテンツマーケティングやSNSやメールなどでのリードナーチャリング、セミナーや展示会でイベントマーケティングが挙げられます。。
MAとは
MAとは、「マーケティングオートメーション」の略で、デマンドジェネレーションにおけるリードの獲得から育成までの過程を自動化し、効率的に運用するための仕組みです。MAでは、WEBサイトやメールなどのチャネルを通じてリードを集め、スコアリングやナーチャリングなどの機能でリードを育成し、営業部門に引き渡します。
メリットは、リード管理や育成にかかる時間やコストの削減や行動履歴や属性情報などを詳細に把握できることです。また、リードごとに最適なコンテンツやタイミングでアプローチすることも可能です。
MAの例として、Webサイトへの訪問者に対してフォームやチャットボットでリード獲得を行えることやメールでリードに定期的にコンテンツを送付し、関心度を高められることが挙げられます。また、リードのスコアに応じて営業部門にアラートを送り、アプローチのタイミングを知らせることもできます。
デマンドジェネレーション・MA・ABMの違いと関係性
ABMとデマンドジェネレーション・MAとABMは以下のような点で異なります。
アカウント対象 | アプローチ方法 | 主な部署 | |
ABM | 企業 | 狭く深く | 営業と連携 |
デマンドジェネレーション | 個人 | 広く浅く | マーケティング |
MA | 個人 | 広く浅く | マーケティング |
しかし、これらの手法は対立するものではなく、補完するものです。
デマンドジェネレーション・MAで行われるリード管理や育成はABMでも必要な活動ですし、ABMで行われるターゲット企業へのパーソナライズされたアプローチはデマンドジェネレーション・MAでも有効な手法です。また、デマンドジェネレーション・MAで獲得したリードの中からターゲット企業を選定し、ABMに移行することも可能です。
まとめ
この記事では、ABMとは何かについて解説しました。ABMは、自社にとって価値の高い顧客企業をターゲットにして、その企業に合わせたマーケティングや営業を行う手法です。
BtoBマーケティングに興味のある方は、ぜひABMについてもっと学んでみてください。