近年「セールスイネーブルメント」というワードを目にする機会が増えています。本記事では、どういった意味で使われているのか、注目される背景、導入メリットなどをご紹介します。
セールスイネーブルメントの定義・注目される背景
定義は「営業活動全体を改善し、最適化すること」
セールスイネーブルメントとは、営業活動全体を改善し、営業組織にとって最も成果が出るよう最適化するための概念・仕組みのことです。営業活動全体をスコープとするため、改善範囲は広く、営業プロセスの改善、CRMや営業支援ツールの導入・最適化など多岐にわたります。
注目されている背景
セールスイネーブルメントが注目されている背景としては、「営業ノウハウが属人化している」「顧客ニーズを明確に把握できていない」の2点が挙げられます。
営業ノウハウが属人化している
営業スキルは各メンバーの力量により大きく差が生まれます。どんな営業組織でも、KGI・KPIを達成できるメンバーや惜しくも目標に届かないメンバー、あるいは全く達成意識のないメンバーと様々に分かれるのではないでしょうか。この個人間のスキル差を無くすためにセールスイネーブルメントが必要だと言われています。
顧客ニーズを明確に把握できていない
購買プロセスの変化により顧客ニーズが把握しづらくなったことも、セールスイネーブルメントが注目されている要因のひとつです。情報化社会における現在では、顧客の購買プロセスの57%は営業担当者に会う前に終わっていると言われています*1。
そのため、早い段階でいかに顧客ニーズを掴むかが営業活動において非常に重要なポイントになっており、顧客ニーズを引き出す能力を高めようとセールスイネーブルメントに取り組む企業が増えています。
*1:The Digital Evolution in B2B Marketingより引用
セールスイネーブルメントの導入メリット
セールスイネーブルメントを導入するメリットは3つあります。
営業スキルの平準化
1つ目は、属人化した営業スキルを平準化できる点です。トレーニング・コーチングなどを通してメンバーの習熟度を計り、チーム全体でスキル向上を目指します。また、実際にスキルが身に付いているかの振り返りまでを行い、PDCAを回しながら営業組織の最適化を図ります。
ハイパフォーマーの知識・成功事例などの経験を体系化してコンテンツにすることが一般的ですので、高い水準での人材育成に最適です。
顧客ニーズの把握が可能
顧客との接触プロセスを改善するため、顧客ニーズの把握を正確に行えます。具体的には、CRM・SFAの活用による営業データの蓄積を通じてニーズの言語化を測ったり、ニーズの顕在化のため営業メンバーに向けたトレーニングやコーチングを実施します。
施策ごとの効果を可視化し改善ができる
トレーニングやコーチングを通じてハイパフォーマーのスキルを身につけたメンバーは、自身の行動の見直しだけではなく営業活動全体の最適化に向けて施策を打てるようになります。また、セールスイネーブルメントという仕組み自体が行動と振り返りをセットで実施するものなので、営業施策においても実行・振り返りをマストで行えるようになります。
セールスイネーブルメントの成功ポイント5選
セールスイネーブルメントを成功に導くためのポイントを5つピックアップしてご紹介していきます。
専門の担当者をアサインする
社内推進の担当者は、できれば兼任ではなく専任でアサインしましょう。営業全体という膨大な範囲を改善するため、専任の担当者が居ない場合、営業改善が中途半端な形で終わるリスクがあります。
またアサインする担当者は営業成績が良いというだけでなく、人材育成の適性があるかどうかの観点で見極めることをおすすめします。理由は、営業成績が良い方をアサインしても、その方が営業フローの整理や人材育成・指導が得意かどうかはまた別問題だからです。
営業データを蓄積する
CRM・SFAなどの顧客管理ツールを導入して、セールスイネーブルメントによる営業成果を定量的に測れる状態にしましょう。ポイントは蓄積した営業データを元に、注力すべきポイントを探っていくことです。
営業データに基づいた仮説もないままだと最適ではない営業フローの構築や、求められていない営業スキルの醸成を推し進めてしまい、結果として組織力の低下に繋がってしまいます。
蓄積したデータを可視化し課題を見つける
営業データの蓄積が進んできたら、そのデータをグラフ化し、可視化出来る状態にしましょう。ポイントは営業活動の内、ボトルネックがどこにあるのか分かるような示唆を出すことです。
課題に対して施策の実行・改善をする
データの可視化により営業課題が顕在化したら、解決に向けて施策の検討から実行、改善まで行いましょう。ポイントは、解決した場合に最も良い影響が大きい課題に対して優先的に取り組んでいくことです。複数施策を並行して検討していると優先順位付けがおろそかになってしまうことも起こります。専任担当者が責任を持って施策の実行・改善を行いましょう。
営業ノウハウを共有し属人化を防ぐ
ここまでで検証・実行した施策は、後から振り返ることが出来るテキストや動画などの形で残しておき、営業ノウハウとしてチーム全体に共有しましょう。営業の仕組みとして、今後似たような状況に陥った時に再現性を持って実行できるように整えることがポイントです。
セールスイネーブルメントの成功事例
セールスイネーブルメントに実際に取り組んで成果が出た事例をご紹介します。
①営業研修後、成約率が2倍に上昇!:IT企業A社
営業課題:
インサイドセールス組織が最適化されておらず、数値と質のコントロールが難しい
インサイドセールス組織は社内にありましたが、兼任者で構成されていたため、体系化された仕組みが特にありませんでした。そのためインサイドセールスではなくテレアポ部隊として機能していました。また外部のセールスパートナーの力を借りていたことも相まって、営業数値と質のコントロールが難しい現状に陥っていました。
実際に取り組んだこと:ワークフローの作成、トークスクリプトの作成
営業組織にテコ入れを行うべく、外部のイネーブルメント研修を実施。具体的には、ワークフローとトークスクリプトの作成研修です。ワークフローについて、属人化していた「リードランク」の設計などが進み、営業活動の最適化に大きく寄与しました。また、誰が営業しても一定以上の成果が出せる、属人化しないトークスクリプトを作成したことにより、営業スキルの平準化が図れています。
得られた成果:成約率が2倍に上昇
結果として、セールス活動を行う中で顧客の本質的な課題が見えるようになり、フィールドセールスが商談する際に提案の精度を上げることが可能に。最終的には成約率が20%まで向上しました。
②ツール利用で、属人的な管理業務から脱却に成功!
営業課題:
顧客情報の管理が属人化していて、顧客リストを有効活用できていなかった
顧客情報の管理はスプレッドシートやExcelで各担当者が行っており、記載方法などに関しても属人化していることが課題でした。支援できるクライアントも増えているフェーズでしたが、リスト管理がうまくいっていないために、顧客アプローチがスムーズに出来ない状況に陥っていました。
実際に取り組んだこと:UIの使いやすさや運用開始までの速いスピード感を決め手に、顧客管理クラウドを導入
早く属人化から脱したいという思いから、すぐに導入できて使いやすい、をポイントに顧客管理クラウドの導入を検討。
得られた成果:属人的な管理から脱却できた
結果としては、顧客管理クラウドを導入したことで属人的なリスト管理から抜け出すことができました。また、メール一括配信機能なども、MAほど難しくなく組織に適したものであったため、メンバー間での導入もスムーズでした。
③営業代行利用で、柔軟な対応とナレッジの共有でチーム強化
営業課題:マーケティング施策が行き届かない企業に対して有効なアプローチができない
新規顧客の拡大のために施策を検討していましたが、従業員数1000名以上などのエンプラ企業に対してはマーケティングの難易度が高いという課題がありました。BDRを実施してリード獲得を試みますが、知見が足りなかったため、外部のインサイドセールスノウハウを活用することを検討し始めました。
実際に取り組んだこと:外部リソースの活用により質の良いアポ獲得、目的に対しての柔軟な改善
他社から評判の良かったインサイドセールス代行企業へ、商談獲得・資料送付を目的とした1000人以上企業規模へのアウトバウンドコールを実施してもらいました。その際、インサイドセールスに詳しい企業でノウハウを共有してもらえる・インサイドセールスの専門家として信頼できる、という点にメリットを感じて依頼しています。
得られた成果:柔軟な対応とナレッジの共有でチーム強化
結果として、質の高いアポイントを期待通りの件数で供給される結果に。またセールスノウハウの面でも満足しており、発生した営業課題に対して即時に対応して柔軟に改善提案をしてもらいました。
元々はBDRによるリードの獲得がメインの目的だったのですが、自社内のインサイドセールス強化のために、外部パートナーの取り組みをナレッジとして吸収しています。
まとめ
今回は、セールスイネーブルメントについて解説しました。セールスイネーブルメントについて詳しく知りたい方やセールスイネーブルメントを自社に導入したい方などの参考になれば幸いです。
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